AEDとは

 それまで元気だった人が突然倒れ、心臓が停止したような場合、心電図は心室細動という重症の不整脈であることが最も多いのですが、その唯一の治療法となるのが除細動です。


 AEDとは、自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator)といい、救急現場で一般の人でも、簡単、確実に除細動が行うことができるように作られた医療機器です。 

 AEDは、コンピュータを利用して、自動的に傷病者の心電図を解析して、除細動が必要な傷病者かどうかを判定します。操作は音声の指示にしたがって行いますが、除細動が必要な場合に限って、除細動を行うように音声の指示を出すように設計されていて、それ以外の場合には電気ショックが行えないよう安全性が確保されています。したがって、一般の人でも簡単な講習を受ければ、確実に操作することができます。


  今後は、不特定の人々が集まる場所や大きなイベント会場などに配置され、救命に役立てられることが期待されています。

 応急手当の重要性

 カーラーの救命曲線(右図)は、もし、傷病者が心臓停止後、呼吸停止後、多量出血のまま放置された場合、何分後に死亡するかを確率的に示した図です。
 この図から心臓が停止したときは、できるだけ早く処置をしないと生存の可能性が大きく下がることがわかります。
 救急車が来るまで何もしなければ、救命のチャンスはあっという間になくなります。特に心疾患(心筋梗塞や不整脈など)で突然に心臓が止まった傷病者の命を救うためには、心肺蘇生を行うとともに、心臓への除細動(電気ショック)をできるだけ早く行うことが大変重要です。

 これまで日本では医療資格を持たない一般の人々が除細動を行うことは認められていませんでしたが、最近になってAEDを使って行うことが認められ、救急現場に居合わせ
た人が行う応急手当の中にAEDを使った除細動が加わりました。

AEDを使った除細動(電気ショック)について

 心室細動を取り除き、正常な心臓のリズムに戻すためには、心臓に電気ショックを与える除細動をできるだけ早く行うこと(5分以内)が唯一の治療法です。

 心室細動になってから除細動を行うまでの時間と生存退院率の関係は、除細動が1分遅れると、7~10%の割合で下がるといわれています。このため、傷病者が倒れた現場に居合わせた人が、その場でできるだけ早く除細動を行うことが重要なのです。

 もちろん、AEDが近くにあるなしにかかわらず、救急車が到着するまで人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生を行うことは大変重要です。心肺蘇生法により心室細動の時間を引き伸ばして、除細動を行うまでの時間(AEDがない場合は救急車が到着するまでの時間)を稼ぐことができるからです。また、除細動は心室細動については有効な処置ですが、心臓が停止した傷病者がすべて心室細動をおこしているとは限らないからです。その場でできる応急処置として、人工呼吸や心臓マッサージはやはり大切です。

早期に除細動を行わなければならない理由

  • それまで元気だった人が突然倒れたような場合、心電図は除細動により処置可能な心室細動であることが最も多いこと。
  • 心室細動に対する最も有効な対処法は、除細動であること。
  • 除細動の成功率は、時間の経過とともにどんどん悪くなること。
  • 心室細動のリズムが持続する時間は数分に過ぎないこと。

AED使用上の注意

  • AEDの性能は非常に高いのですが、ごくまれに心臓が停止していない傷病者に対して電気ショックの指示がでることがあります。これはAEDが一定の心拍数を超える心室頻拍に対しても除細動の指示を出すようにプログラムされているためです。

    AEDを安全に使用するためには、操作をする人が、傷病者の意識消失、呼吸停止、循環のサインの有無を確認することが大前提になります。
  • 心電図を解析している間は、傷病者に触れたり、動かしたりしないように注意します。筋肉が動くことで影響を受けます。
  • 無線電波を使用する機器はAEDの心電図を調べることに影響を与える可能性があります。心電図を調べている間は、そのような機器の使用を避けましょう。
  • ペースメーカーをつけている傷病者の場合は、AEDが適切に作動しないことがあります。


※ AEDの詳しい使い方については、「心肺蘇生法の手順」をご覧ください。

参考文献 応急手当指導者標準テキスト追補版

用語解説

心室細動(しんしつさいどう)
 心臓が無秩序にけいれんして、血液を送り出すポンプの役割を果たせない状態。放置すれば急速に死にいたる。

不整脈(ふせいみゃく)
 心臓のリズムが正常でないときの脈拍。

除細動(じょさいどう)
 心臓が心室細動を起こしているときに、電気ショックを与えて、心臓のリズムを正常に戻す処置。

心室頻拍(しんしつひんぱく)
 正常なリズムでない心臓の収縮がおきている状態。脈拍は1分間に100回から150回以上。

循環のサイン(じゅんかんのさいん)
 呼吸や咳、体の動きなど、心臓が動いて入れば確認できるもの。